
昨年4月、JR福知山線脱線事故の生々しさは、未だ記憶に新しい。
マンション一階の駐車場に突っ込んで大破した車両。
周辺の住民の通報や協力もあって助け出された人々ももちろんいたが、帰らぬ人となった人々、重症を負った人々も多くいた。
クラッシュ症候群(挫滅症候群)とは、大地震や列車事故などの際に頻発する突然死の原因の多くを占める恐ろしい症状のことである。
瓦礫の下敷きになって手足が一定時間圧迫されたりすると、筋肉中に腎毒性物質が蓄積される。
その後救出されたとしても、毒性物質が体内に回り、不整脈や多臓器不全で死に至る。
1995年の阪神大震災時には、クラッシュ症候群(挫滅症候群)を発症した372人の内、約50人が死亡した。
救出後の治療には、瓦礫に挟まれている間に輸液を施すなどの治療を施せたかどうかが鍵を握ることが多い。
それが生死を分ける決め手になることも多いのだ。
福知山線の事故の場合には、阪神大震災の教訓を生かし、瓦礫の下の負傷者に輸液や酸素吸入を施したり水を飲ませたりした勇敢な医療班の人々がいた。
クラッシュ症候群(挫滅症候群)の治療例としては第二次世界大戦時などに報告されているが、日本では未経験のことで、マニュアルもない。
思うような治療結果を残せなかった阪神大震災だったが、福知山線の事故の際にはその時の教訓を生かすことも、ある程度はできた。
せっかく病院へ運ばれた重傷者が息を引き取っていまうのを、現場で適切な処置を施すことができれば防ぐこともできる。
福知山線事故のときには、使命感に燃えて果敢に現場での治療に挑んだ医師たちの力があったのである。
地方自治体でも、瓦礫の下でのクラッシュ症候群(挫滅症候群)への対応などのための対策を遅ればせながら取り始めたところもあるようである。
クラッシュ症候群(挫滅症候群)。
この恐ろしい症状への日本での対策は、まだ始まったばかりと言えるだろう。